最高裁判所第二小法廷 昭和26年(れ)521号 判決 1952年3月28日
主文
原判決を破棄する。
本件を名古屋高等裁判所に差戻す。
理由
被告人の上告趣意について。
論旨は刑の量定についての主張であって上告適法の理由とならない。
弁護人鎌田豊吉の上告趣意第二、三点について。
所論は、審理不尽理由不備及び量刑の不当を主張するものであり、上告適法の理由とならない。
同第一点について。
本件は公文書偽造行使詐欺被告事件であって、刑訴施行法二条旧刑訴三三四条によりいわゆる必要的弁護事件であるに拘らず、原審では弁護人の立会なくして開廷し審理判決したことは所論のとおりである。所論は右原審の手続は旧刑訴四一〇条一〇号に該当し憲法三一条に違反すると共に旧来の大審院判例に違反すると主張するのであるが、如何なる被告事件を必要的弁護事件となすべきかは専ら刑訴法によって決せらるべき問題であるから、所論違憲の主張は該らない(昭和二四年(れ)第六〇四号同二五年二月一日大法廷判決参照)。又所論は判例違反を主張するけれども判例を具体的に示さないのであるから適法な論旨でない(昭和二四年新(れ)第四九九号同二五年五月一二日第二小法廷判決参照)。
しかしながら、原審が必要的弁護事件である本件につき弁護人の立会なくして開廷審理したことは旧刑訴三三四条の規定に違反するものであり、そしてこの法令違反は判決に影響を及ぼすべきものというべきであり、且つ原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認められるから、刑訴施行法三条の二刑訴四一一条一号により原判決を破棄し、刑訴施行法二条旧刑訴四四八条の二により本件を原裁判所に差戻すべきものである。
よって主文のとおり判決する。
この判決は裁判官全員一致の意見である。
(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)